根治手術


がん専門医は患者さんを早期がんと診断した場合、高齢者でなければ基本的には「根治手術」を勧めます。
根治手術とは、
「腫瘍の完全な切除、消失を可能とするような手術」
(日本癌治療学会 用語委員会 用語集 2004年版 9頁)

早期がんと診断された大半の患者さんが、治療せずに放置すれば近い将来、がんが自身の命を奪うと考えるでしょう。
がん患者が、根治手術を望むのは当然の心理ですし、その希望は尊重されなければなりません。
しかし、先に引用した文献にあったように、「現在の医療では、 どのようながんが進展し、生命予後に影響を及ぼすかはわかっていません」ので、根治手術を受けた患者さんの中に、不利益だけ被った方が存在する可能性を否定できません。
その不利益が、発癌リスクを上昇させるものであったとするならば、患者側としては容認し難い不利益です。

 

がん手術である場合,免疫能低下はがんの再発・転移に直結する
(中略)
本来,明確な治療手段である手術そのものが生体に不利益をもたらすことはすでに100年以上前から指摘されている。
Velpeau(1795~1867)は手術でがんを切除することがむしろ腫瘍の発育を刺激してしまうことを警告している。
(12頁)

ある種の麻酔薬(特に揮発性吸入麻酔薬,モルヒネ)NK細胞やT細胞,マクロファージなどの細胞性免疫機能を抑制するため,不適切な麻酔管理は周術期において,がん患者を がん転移またはがんが再発しやすい環境下においてしまうことになる。
(13頁)

...周術期同種血輸血による免疫抑制はがん患者においては腫瘍再発・転移をもたらす
少なくとも大腸がん患者ではこのことを示唆する多くの報告がある。
(18頁)


丸石製薬㈱ 季刊誌
Anesthesia 21 Century Vol.12 No.3-38 2010
『周術期管理と免疫機能』
東北大学病院麻酔科 診療科長(麻酔科) 黒澤 伸


もちろん、現時点において、根治手術の意義を否定すべきではありませんし、手術を受けた患者さん本人が、「根治」を得られたと解釈するなら、その方にとっては意義のある治療であったと考えるのが当然です。

一方、放置しても悪さをしないがん細胞が、根治手術によって刺激され発育し、悪化したケースの存在も否定できません。


医師は根治手術による発癌リスクも患者に説明しなさい!
o(*≧д≦)o

 


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