化学兵器


現在も使われている抗がん剤、メルファランは化学兵器です。
国内の公的な研究機関が、化学兵器として分類しています。
神奈川県環境科学センターのデータベース、化学物質安全情報提供システム(kis-net)に、メルファランの詳細なデータが掲載されています。

 

項目
 
物質名
L-フェニルアラニンマスタード
日本語名
L-フェニルアラニンマスタード
メルファラン
各種コード番号
CAS番号:148-82-3
用途
医薬,医薬中間体 化学兵器
変異原性
DNA損傷試験ヒト(生体外) 陽性
不定期DNA合成試験ヒト(生体外) 陽性
DNA合成阻害試験ヒト(生体外) 陽性
染色体異常試験ヒト(生体外) 陽性
姉妹染色分体交換試験ヒト(生体外) 陽性
毒性症状
経口摂取、腹腔内投与などで毒性を示す。経口摂取で吐き気、月経異常を起こす。皮膚を刺激。
毒ガスとして使用
ヒト発癌性、ヒト変異原性あり
発癌性
評価機関評価内容
IARC発癌性評価1 [発癌性の十分なデータがある物質]
神奈川県環境科学センター 環境情報部
化学物質安全情報提供システム(kis-net)
メルファラン 個別物質全項目表示(1/1)
データの一部を、引用して表を作成。

 

メルファラン(商品名 アルケラン)は多発性骨髄腫(血液がんの一種)の治療剤として使用されています。

この表は掲載されていたデータの一部を、引用して編集したものです。
左側メニュー、データの検索「化学物質の詳細」に、データの閲覧手順を記載しました。

データの引用元とした、化学物質安全情報提供システム(kis-net)は、国立環境研究所や、国立医薬品食品衛生研究所のデータベースともリンクされています。


メルファランは、ナイトロジェン・マスタードとよばれる化学兵器の誘導体です。
誘導体とは母体の構造に改変を加えたもので、メルファランは子孫といえます。
ナイトロジェン・マスタードの誘導体は他にも複数存在し、アルキル化剤という分類の抗がん剤として現在も使用されています。
考えてみればこれは大変、恐ろしい事で、抗がん剤を取り扱う医療関係者には、くれぐれもテロリストの手に渡らぬよう、厳重に管理して頂きたいと思います。
この事については、考え、立場の違いにこだわらず、多くの方々が積極的に声をあげて頂く事を望みます。
また、アルキル化剤以外の抗がん剤も、決して引けをとらない毒性を有しています。
その中には動物実験のデータではありますが、メルファランをはるかに上回る、発癌能力を有するものもあります。


物質の発癌性の強さを、科学的に検証し、数値化して公開しているデータベースが存在します。
ここでよく誤解されやすいのが、表中の一番下に記載されている、IARCの発癌性評価です。
これはWHOの外部組織であるIARC(国際がん研究機関)によって公開されているデータで、IARC発癌性リスク一覧とよばれるものですが、発癌性の強さを示す指標ではありません。
かつての私も誤解していました。
IARC発癌性リスク一覧は、個々の化学物質がヒトや動物に対して発癌性を有する事が、科学的にどの程度の「確かさ」で証明されているかを分類したものです。

例えばメルファランは、IARC発癌性リスク一覧で、最上位のグループ1に分類されていますが、アルコール飲料も同じグループに分類されています。

 

Group
Groupの内容
メルファラン
1
ヒトに対する発癌性を断定
動物に対する発癌性を断定
アルコール飲料
1
ヒトに対する発癌性を断定
動物に対する発癌性を断定
International Agency for Research on Cancer
Agents Classified by the IARC Monographs,Volumes 1-106
http://www.iarc.fr/
データの一部を、引用して表を作成


IARC分類のみでは、違いが分かりません。
抗がん剤の発癌能力を知る為には、アルコール飲料のような、日常生活で接する発癌物質との比較が必要です。
比較するには、IARC分類の「確かさ」に加えて、「強さ」を数値化した指標が必須となります。


米国に、カリフォルニア大学バークレー校という、名門大学が存在します。
現在までに、70名のノーベル賞受賞者を輩出しています。
この大学は、The Carcinogenic Potency Database (CPDB)というデータベースを公開しています。
CPDBには、 個々の化学物質における発癌性の「強さ」を表すデータが掲載されています。


日本語には対応していません。
Alcoholic beverages(アルコール飲料)という品目では、リストに存在しません。
しかし、Ethyl alcohol(エチルアルコール)はリストに存在します。
別名「エタノール」、お酒に含まれているアルコール成分です。
アルコールが体内で分解されると、アセトアルデヒドという発癌物質が生成されます。
アルコール飲料を発癌物質たらしめている、根本の物質ですから、比較対象としてふさわしいといえるでしょう。
Melphalan(メルファラン)はリストに存在します。
Nitrogen mustard(ナイトロジェン・マスタード)もリストに存在しました。


では、CPDBのデータによる、発癌性の「強さ」の比較をご覧ください。


Rats and Mice: Cancer Test Summary
TD50 (mg/kg/day)
Nitrogen mustard
(CAS 51-75-2)
Rat 0.0114
Melphalan
(CAS 148-82-3)
Rat 0.0938
Ethyl alcohol
(CAS 64-17-5)
Rat 9110
The Carcinogenic Potency Database (CPDB) http://potency.berkeley.edu/
データの一部を、引用して表を作成

 

Ratの後に続く数字が小さいほど発癌性が強い、という事になります。
表中のCASはCAS登録番号の略で、化学物質に付与されている登録番号です。
表中のTD50(toxic dose 50)は、50%発癌量とよばれるものです。
この発癌試験においては、試験動物の半数が発癌に至った、1日平均投与量がTD50です。
TD50は、試験動物の体重1kg当たりの1日平均投与量で示されます。

例えば表中のMelphalanはRat 0.0938となっていますが、これは複数のラットにメルファランを投与し半数が発癌に至った、1日平均投与量が0.0938mg/kgであった、という意味になります。
参考までに、料理で使う計量スプーン、小さじ一杯で5000mgです。
エチルアルコールは半数が発癌に至った、1日平均投与量が9110mg/kgであった、という意味になります。

 

TD50は動物実験で50%の動物にがんを発生させうる発がん物質の量(1日あたりの投与量)のことであり、その値が小さいほど発がん性が強い。


『放射線および環境化学物質による発がん―本当に微量でも危険なのか? 』 医療科学社 (2005年) 58頁
独立行政法人放射線医学総合研究所名誉研究員
佐渡敏彦

 

The Carcinogenic Potency Database (CPDB)のデータは、どなたでも簡単に検索する事ができます。
当サイトの左側メニュー、データの検索「発癌性の強さ」に、データを閲覧するまでの手順を記載しました。


公的研究機関が「化学兵器」としても分類する薬剤ですから、がん専門医はその毒性を十分に理解している、はずです。
化学療法の実施において、この薬剤の発癌リスクが説明されず、投与が行われたとしたならば、「非人道的」な投与といえるでしょう。

 


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