遺伝毒性


そもそも、「がん」とは何か。

 

正常な細胞は、遺伝子の働きで細胞の増殖がうまくコントロールされています。
ところが、この細胞の遺伝子が何らかの理由で突然変異を起こすと、細胞増殖のコントロールができなくなり無秩序な増殖が起こります
この変異した細胞が増殖を繰り返した結果、周囲の組織や他の組織にまで侵入し、自分の組織や他の組織を破壊する悪性化した性質を持つ腫瘍ができます。
それが“がん”と呼ばれる病気です。


農林水産省 ホームページ
「がん」と「遺伝毒性発がん物質」 http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/
a_syosai/about/iden.html
2013年10月23日確認

 

農林水産省によって公表されているこの情報は、私たち一般人に対して発信されているものです。
がん専門医はこの情報をさらに詳細に、分かりやすく、患者さんが理解できるように説明する必要があるでしょう。
しかし、化学療法が勧められる現場において、治療対象となる「がんとは何か」という、根本的な事についてすら説明不十分なのが現状ではないでしょうか。
どうして自身が、がんと診断されるに至ったのかを考える患者さんにとって、がんを引き起こす原因は重要な関心事項といえるでしょう。
ならば 「突然変異」という用語も説明されてしかるべきですが、これも大半のケースで説明されていないと考えられます。
なぜなら、その突然変異を含む遺伝的障害を誘発するのが遺伝毒性であり、抗がん剤の多くが遺伝毒性を有しているからです。

 

遺伝子は細胞中のDNAに暗号として記録されています。
このDNAが、外的要因によって傷付つけられると暗号が変化し、遺伝子の突然変異が起こります
このように、細胞のDNAに直接作用して傷付ける可能性があり、遺伝子の突然変異をもたらし、それが原因となって発がんを起こす物質を「遺伝毒性発がん物質」といいます。


前出 農林水産省 ホームページ
「がん」と「遺伝毒性発がん物質」

 

基本的に抗がん剤は、「遺伝毒性発がん物質」であるということができます。

 

DNAのテープに記憶された生命をつくる情報は「遺伝情報」または「遺伝の暗号(ゲネティック・コード)といわれる。
(99頁)

発癌物質や催奇形性物質とは、結局のところ、細胞のDNAの遺伝情報を誤らせて癌や奇形を生ずるものであるから、このような恐れのある物質は一般に「遺伝毒物」とよばれる。
(122頁)

制癌剤は、細胞増殖の起点となるDNA(核酸)にある遺伝情報を引き出す転写の過程に影響をあたえて、遺伝情報を、根底から誤らせてしまうものだ
(120頁)


『毒物雑学事典―ヘビ毒から発ガン物質まで』 (1984年) ㈱講談社
医学博士 大木幸介


繰り返し述べてきたように、遺伝毒性を有すると考えられる抗がん剤の多くが、現在の主流である多剤併用療法のほとんどに組み込まれています。

ここで問題となるのが、抗がん剤の有する遺伝毒性の「強さ」です。
細胞毒性型の抗がん剤において、その遺伝毒性は極めて強い、ということができます。

 

検定物質
今回調べた抗ガン剤は、代謝きっ抗剤である5-アザシチジン及び5-フルオロウラシルの2物質と、抗生物質であるアクチノマイシンD、マイトマイシンC及びブレオマイシンの3物質であり、合わせて5物質についてRec-assay液体法による遺伝毒性試験を行った

実験結果及び考察
これら5物質についてRec-assay液体法を行った結果を表-1に示す。
Rec-assay液体法によるDNA損傷判定基準によると「S-probitが0.593以上の物質はDNA損傷性強陽性であるので、今回調べた抗ガン剤はすべて極めて強いDNA損傷性を持っていると考えられる

 

表-1 抗ガン剤のRec-assay液体法の結果
サンプル
S-probit
DNA damag
5-アザシチジン
6.67
++
5-フルオロウラシル
4.81
++
アクチノマイシンD
1.90
++
マイトマイシンC
2.16
++
ブレオマイシン
2.01
++


『枯草菌Rec-assay法による抗ガン剤の遺伝毒性評価』
土木学会第45回年次学術講演会(平成2年9月) 956頁
京都大学工学部付属環境微量汚染制御実験施設
正員 松井三郎
学正員 松田知成
※表-1 改変引用

 

プラチナ製剤であるシスプラチンも、遺伝毒性試験(枯草菌Rec-assay法)において「強陽性」であるとされています(環境工学研究論文集・第35巻 1998年 『マイクロプレートを用いた枯草菌 rec-assay の開発とその評価』 317頁 松井宏樹)。

アルキル化剤であるシクロホスファミドは、前述したマイトマイシンC同様、遺伝毒性試験(小核試験)において陽性対象群として投与されています(内閣府 食品安全委員会 『オフロキサシンの食品健康影響評価について(案)』 12-13頁)。


化学療法を勧める患者さんに対しては、抗がん剤の有用性を強調するに加え、その遺伝毒性の強さも説明した上で、医師と患者が共に考え、治療の選択をして頂くのが当然です。
これをがん専門医が怠り、その投与を正当化しようとすれば、事実を知った「患者の敵」となるでしょう。

 


血液毒性セントラルドグマ